腰・納豆菌・土

先週の月曜、眠っているあいだに腰を痛めたらしく、まともに歩けなくなった。30度ほどの前傾姿勢になると一応は歩けるが、たびたび電撃のような痛みが走って妙な声が出る。椅子に座ってPC作業をしているかぎり痛みはなく、仕事は問題なく進んだが、台所に立って料理をしたり1歳児を抱き上げることはできない。この日は全面的に妻に頼った。俺は料理ができないといいつつ大量の大豆を洗って水に浸し、冷蔵庫へ入れた。

水曜日、吸水して膨らんだ豆をホットクックで蒸した。今まで何度も納豆を作ってきたが、吸水や加熱が足りなかったのか、噛み応えのある納豆になったことが多い。今回は4時間かけて蒸したので歯が無くとも歯茎で押しつぶせるほどの柔らかさになった。我が家の1歳児はもう歯が生えそろっているし腕を噛まれれば歯形が残る。直立してどこまでも転ばずに歩いて行ける。俺の腰の痛みは変わらないが、前傾姿勢は15度くらいになった。1歳児のほうが真っすぐ立っている。

木曜日、粉末の納豆菌を混ぜた大豆を、ホットクックで24時間の保温にする。通販で買った納豆菌を振りかけるなんて、贅沢な作り方をしているなと感慨深い。昔、一人暮らしを始めたときに読んだ川上卓也『貧乏神髄』では、田んぼで藁を拾ってきて煮沸消毒すると書かれていた。納豆菌だけが生き残り、他の雑菌はすべて死滅するらしい。とはいえ当時の俺も田んぼへ藁を拾いに行くことはなく、市販の納豆をすすいだ湯から納豆菌を取り、魔法瓶に豆と菌を入れて保温したのだった。

金曜日、発酵を終えた納豆を冷蔵庫に入れた。しばらく寝かせると旨みが出るらしい。それにしても納豆づくりに5日間もかかるなんて「一週間」の歌みたいだな、と内心で思っていたら、妻にも「一週間」の歌みたいだねと言われた。月曜日に大豆を洗い、火曜日は大豆を浸し、水曜日に大豆を蒸して、テュリャ テュリャ テュリャ テュリャリャ。

土曜日、腰の痛みはだいぶ引いて、前傾姿勢は5度くらいになった。30度→15度→5度と写真を並べてみたら類人猿の進化図になりそうだ。

日曜日、アパート前で子どもたちと遊んでいると郵便局の車が着いた。いつも荷物を届けてくれる顔見知りの老夫婦に挨拶する。おばあさんは腰が曲がっていて、2階の部屋までゆっくりと階段を昇ってくるので、なるべく俺が1階に降りて受け取っている。この日はたまたま1階にいたので自分でやりますと伝え、軽ワゴンから4箱の大きな段ボールを自分で降ろした。通販で買ったプランターと10kgの土を持ち上げても痛みはない。腰はようやく完治したようだ。配達のおじいさんはおそらく70代だと思うが、週末にも休みなく配達しているようで、こんな重たいものを通販で買ってしまい申し訳なかった。

月曜日、今日は朝から仕事が忙しく、まだプランターに土は入れていない。たくさん作ったはずの納豆は子どもたちが食べ切ってしまった。明日はまた大豆を洗い、水曜日に大豆を蒸して、金曜日に食べる。