シチュー

けんちん汁に入れたみじん切りのショウガが辛いと言って子どもがほとんど食べなかった。大人にとっては隠し味程度の量だけれど、きっと子どもは舌の作りが異なっていて、特定の味を強く感じるのかもしれない。一般的には、加齢とともに人の味覚が変わっていくことを味覚の成長や発達と捉える向きがあるけれど、俺はそんなものは変化に過ぎないと思う。大人の味覚が優れているわけでも、子どもの味覚が劣っているわけでもなく、単純にいまは辛味や苦味を好まない時期だというだけだ。ショウガを食べないくらい大したことではないし、辛いと感じるものを強制もできない。

とはいえコンニャクも油揚げも入れてしまったけんちん汁をどうすれば子ども好みの料理に改変できるものかと悩み、少しためらったものの生クリームと牛乳とコンソメを入れてクリームシチューに変えた。もしもコンニャクと生クリームだけを一緒に食べろと言われたら断るけれど、コンニャク入りのクリームシチューは意外にも違和感がなかった。むしろ今後は積極的にシチューの具材として入れても良さそうだ。今回入れたのは生芋こんにゃくだから、普通のこんにゃくの場合に美味しいかどうかは分からない。子どもはシチューは辛くなくて美味しいと言っていた。

コープの野菜売り場の一角に、菜の花の造花で囲まれて、春野菜の売り場があった。まだ本格的な雪を見ていないのに、まだ真冬にはなっていないのに、もう春が来たのか……と少し動揺する。あるいは服屋で季節を先取りして売り出すように、本当は春なんて遥か先なのに、春野菜と名付けて売っているだけかもしれない。暖かな冬はそもそも冬と呼べるのか、すでに春が訪れているのか、季節に何か定義があるのかも分からないけれど、もうしばらくは冬が続いてほしい。シチューは冬に作りたい。